古くなった住宅はリフォームか建て替えのどちらがお得?
2021.10.01更新
古くなった住まいを新しくするとき、「リフォームするか」「建て替えるか」で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
どちらを選ぶと得策かは、家の状態にもよりますし、予算や将来のライフスタイルなど、さまざまな要因によって異なりますから、一概にはいえません。ただ、リフォームにも建て替えにも、それぞれ特徴があります。それを把握した上で、総合的に判断することが大切です。
今回は、リフォームと建て替え、それぞれの定義やメリット・デメリット、迷ったときの判断基準などをまとめました。
リフォームの定義
リフォームとは、今ある建物の内外装や設備を新しくすることをいいます。
工事内容は多岐にわたり、壁紙を張り替えるなど1日程度で終わるものもあれば、家全体を改築する全面リフォーム(フルリフォーム)だと数ヵ月におよぶ工事もあり、現場によってさまざまです。なお、本コラムでは特に指定がない場合、全面リフォームについて述べていきます。
大きな工事であっても、基本的にリフォームの場合、基礎や構造をそのまま生かして施工します。建物の構造によっては間取りの変更ができないケースもありますから、事前に施工業者へ確認することも大切なポイントです。
建て替えの定義
建て替えとは、今ある建物を解体・撤去して新たな建物を建築する工事です。
基礎や構造もすべて取り壊して1から新しい家を建て直すため、制約が少なく、間取りやデザインなどの自由度が高い方法といえます。
思い通りの家を建てられる一方で、既存住宅の解体費と新築する家の建築費もかかるため、建築コストは高くなる傾向にあります。また、工事期間も短くて4ヵ月、長ければ1年以上かかることもあり、その間は仮住まいを探す必要があります。
リフォームと建て替えの特徴を比較!
リフォーム | 建て替え | |
工事内容 | 基礎や構造など、既存住宅の活かせる部分を残した改修工事。 | 既存住宅をすべて解体し、新しい家を1から建てる工事。 |
検討目安 | 築20~30年が目安(設備交換は対応年数に応じる)。 | 築30年以上が目安。 |
工事期間 | 1~3ヵ月(部分リフォームなら1日で終わることもある)。 | 4ヵ月~1年。 |
工事費用 | 500~2,000万円(部分リフォームなら数十万円から数百万円)。 | 1,000~4,000万円(解体費用+新築費用)。 |
工事以外の費用 | 住み続けながらの工事が難しい場合は、仮住まいや引っ越しの費用が必要。 | 仮住まいや引っ越しの費用、地鎮祭などを行う場合は儀式代も必要。 |
申請など | 床面積が変わる場合は、登記申請が必要。 | 登記申請が必要。 |
全面リフォームのメリット・デメリット
建て替えと比べて、全面リフォームのメリットは経済的かつ短期間で工事を完了できることが挙げられます。デメリットは、工事に制約が生じるケースもあり自由度が低いことです。以下で詳しく解説しましょう。
全面リフォームのメリット
全面リフォームのいちばんのメリットは、「安さ」。基礎や構造のほか、使える部分があれば残して工事を進めるため、一般的には建て替えよりも建築コストを抑えられます。予算に合わせて、リフォーム箇所を絞り込んだ工事も可能です。
工事内容によっては住み続けながら進めることもでき、その場合は仮住まいや引っ越し代などの費用も不要です。また、不動産取得税や登録免許税といった各種税金も、建て替え(新築)と比べれば負担が少ない傾向があります。
環境面で考えても、全面リフォームの方が廃材は少なくエコといえます。廃材の処分費用も抑えられるでしょう。築年数の古い建物でも、まだまだ使用できる部分はたくさんありますから、それらを最大限に活用することで、愛着のある家を感じ続けられるでしょう。
全面リフォームのデメリット
建て替えと比べた全面リフォームのデメリットといえば、自由度の低さ。基礎や構造を生かすため、間取りの変更ができなかったり、希望のデザインを叶えられなかったりするケースもあります。とりわけ、壁で建物を支える2×4(ツーバイフォー)だと、制約が大きいです。
技術的に可能な工事もありますが、難工事や工事範囲が広いと、建て替えた方が安くなるケースもありますから、施工会社に見積もりをとって確認すると良いでしょう。
予算面での注意点として、工事を始めてから追加費用が必要になるケースもあること。基礎や構造に腐食やシロアリ被害があると、補強工事などの追加工事が必要になる場合があります。築年数の古い家は、あらかじめ住宅診断を依頼して基礎や構造の状態をチェックするのも一手です。
建て替えのメリット・デメリット
全面リフォームと比べて、建て替えのメリットは思い通りの住まいが建てられる自由度の高さが挙げられます。デメリットは、解体費用を含めた建築コストの高さと工期の長さです。以下で詳しく解説しましょう。
建て替えのメリット
建て替えを希望される方の多くが、「理想の家を実現したい」という想いが強い傾向にあります。ライフスタイルや家族構成にあわせて間取りを決められることはもちろん、快適性を追求したい方なら最新の建材や断熱材、設備、工法なども自由に選べます。
近年は、省エネ性能に優れた住まいが普及していますから、光熱費など住み始めてからのランニングコストを抑えられる点でも、建て替えの方が有利でしょう。建築コストは高くても、長い目で見れば建て替えた方が安くなるかもしれません。
もう一つ大きな利点として、住宅ローンが使えることもポイントです。リフォームにもローン商品はありますが、住宅ローンよりも金利が高く返済負担が重くなる可能性があります。
建て替えのデメリット
建て替えのデメリットといえば、建築コストが高いこと。既存の家を解体する費用相場は、坪単価で3~4万円くらい。その廃材を処分する費用も別途必要です。そのうえで、新築住宅の建築コストがかかってきます。
トータルの工期も長くなりますし、工事期間中は仮住まいを用意する必要があります。賃貸住宅に引っ越すなら、月々の家賃のほか敷金や礼金、不動産会社の仲介手数料、そして引越し費用が必要です。さらに、登記登録など諸費用も必要ですから、あらかじめ予算をしっかり固めることが大切です。
なお、土地によっては建て替えができないところも。建築基準法上の「再建築不可物件」に該当する土地は建て替え自体ができないので、あらかじめ確認しておく必要があります。
リフォームか建て替えかを判断する目安の基準とは?
それぞれのメリット・デメリットから、「工期やコストを抑えるならリフォーム」「自由度の高さを求めるなら建て替え」というのも判断基準の一つになります。
ただ、さまざまな事情からそれだけで決めるのは難しいという方も多いのではないでしょうか。リフォームと建て替えのどちらを選ぶか、最終的な決め手になるのは「コスト」と「家の構造」の点が大きいでしょう。この観点から、どちらを選ぶのが得策なのかを考えてみます。
コストの観点で選ぶ目安の基準
施工会社が提示したリフォームの見積書を見て、「建て替えた方が安いのでは?」と思われる方も少なくないようです。では、建て替えた場合は、いくらになるのでしょうか。
まず、建て替えの場合は既存住宅を解体する費用がかかります。解体費用の相場は坪単価で3~4万円くらいですから、40坪くらいの家だと120~160万円です(別途、廃材処分費用がかかります)。
そのうえ、注文住宅の建築コストが上乗せされます。住宅金融支援機構が調査した「2019年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の平均的な建築費は約3,454万円。つまり、建て替えをするときにかかる費用は3,600万円くらいが目安になります。
なお現在では、1,000万円台で新築戸建が建てられるローコスト住宅もありますから、これより安くできる場合もあるでしょう。いずれにしても、リフォームと建て替え、それぞれの見積もりを依頼して比較検討した上で判断しましょう。
構造の観点で選ぶ目安の基準
築年数が古く耐震性や耐久性に問題がある家だと、リフォームでは対応できないこともあります。基礎や構造に腐食やシロアリ被害が見つかり、補強工事では対応できないとわかれば、選択肢が建て替えしかなくなります。
基礎や構造は外から見えない部分ですから、リフォーム工事が始まってから発見されるというケースもあります。これを防ぐには、工事の前に「住宅診断(ホームインスペクション)」を利用するのも一手です。
住宅診断とは、専門家が家の劣化や欠陥などを調査して、改善箇所やそれにかかる修繕費用、今は大丈夫でも修繕が必要になる目安の時期などを、第三者目線でアドバイスしてくれるサービスです。リフォームができるか否かといった判断もしてくれるでしょうから、迷われている方は活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
日本の平均住宅寿命は、約30年といわれます。しかし、適切なメンテナンスを行い大切に使うことで、築50年以上でも住み続けられる住宅は、たくさんあります。そうした家で基礎や構造に問題がなければ、費用や工期が節約できるリフォーム工事の方が、得策といえるでしょう。
ただ、基礎や構造に問題がある家や、間取りやデザインなどを自由に決めたい方なら、建て替えという選択肢もあります。
ご自宅の現在の状態や、希望のプランが実現できるかなどを知りたい方は、お気軽にサンキホームへお問い合わせください。