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エクステリア・リフォームコラム

『浴室・トイレ編』~バリアフリーについて考える③~

2019.03.25更新

1980年代から日本では高齢者人口か急増しており、高齢社会は今なお続いています。

バリアフリーについて考える連載3回目の今回は、高齢者の住まいづくりのなかで特に安全性に配慮したい「浴室・トイレ」についてご紹介します。

 

浴室・トイレは危険がいっぱい

高齢になると、基礎体力が低下し筋力も衰えるため、小さな段差などにもつまづきやすくなります。

水の事故が起こりやすい浴室や、床が滑りやすい浴室や狭いトイレなどは特に危険がいっぱいです。

 

また、外気温が低くなる時期に発生しやすい健康被害「ヒートショック」など、温度差によるトラブルにも気をつけたいところ。早速、浴室やトイレにおけるバリアフリーのポイントを見ていきましょう。

 

浴室・浴槽のバリアフリーリフォームで行いたいこと

浴室のバリアフリーで気をつけたいポイントは以下のとおりです。

 

・出入り口の段差の対応

・滑りづらい床材への変更

・出入りしやすい扉に変更

・開き戸を引き戸に変更

・断熱性と保温性を上げる(暖房付きの浴室乾燥機の設置も)

・手すりをつける

・高齢者でも入りやすい浴槽の高さに

・浴槽内にも手すりを

・腰掛け付きの浴槽を

・浴室発振器の設置

 

それぞれのポイントについて細かく見ていきましょう。

 

・出入り口の段差の対応

バリアフリー化にあたって重要なのは、身体が思うように動かない人や車椅子の人でも、ストレスなく移動できる環境を作ることです。

 

特に浴室の場合、つまずきやすい出入り口では、転倒が非常に起きやすく危険です。

浴室と脱衣所、そして脱衣所から廊下といった出入り口部分に段差がある場合には、できる限りなくしましょう。

 

構造上、どうしても段差ができてしまうケースであっても、段差を2cm以下にとどめることが理想です。

それ以上の段差となると、足がうまく持ち上がらないときにはどうしてもつまずきやすくなってしまうため、パテで埋めるなどの対処をしてください。

 

ただし、段差を埋めると脱衣所に水が浸水しやすくなってしまいます。

知らず知らずのうちに浴室内の水が脱衣所や廊下へ流れてしまうことで、カビや腐食の原因になりかねません。

 

スムーズな排水を叶えてくれる設備も、あわせて整えましょう。

 

・滑りづらい床材への変更

浴室の床フロア材は、滑りにくいものに変えましょう。

乾いているときには問題がなさそうに見える素材でも、濡れていたり石鹸やシャンプーが付着していたりすると、とたんに滑りやすくなってしまう可能性があります。

 

お年寄りの場合、骨折や浴槽内へ転落してしまうリスクもあり、溺れる危険もあるため注意しなければいけません。

つるつるしたタイル張りの床や、水はけがよくない床は、滑りにくい床材に交換してください。

一般的に滑りにくいとされている木製床材のほか、すでに滑り止め加工がされている樹脂床材なども比較的安全に使えます。

また、もし転倒してしまっても骨折などの大事故につながらないよう、クッション性のある床材を選ぶのもよいでしょう。

「簡易的なものでもいいから、今すぐ変えたい」というときには、接着剤を使って現在の床材の上から安全な床材を貼り付けるという方法もあります。

 

・出入りしやすい扉に変更

出入り口は、段差があったり床材が変わって滑りやすくなったりと、事故が起きやすい部分ですから、多くの場合補助が必要になります。

 

家族やヘルパーの手を借りながら出入りするとなると、扉にはそれなりに広さがなければいけません。

車椅子が必要なケースでは、車椅子ごと問題なく通れる程度に出入り口のスペースを確保しておく必要があります。

誤って転倒してしまったときに共倒れにならないよう、介助が必要な方はもちろんのこと、介助をする方目線に立って出入りのしやすさについて考えることも重要です。

 

さらに、現在の扉がガラス製の場合には、転倒した際に誤って割ってしまうことがないよう他の扉に変える方が安心です。

扉の交換にかかる費用は、現在の状態とどのように変更するのかにもよりますがおよそ6万~20万円ほどが目安となります。

 

・浴室の開き戸を引き戸に変更

出入り口の扉は、開き戸ではなく引き戸がおすすめです。

開き戸は、開けるときに浴室側もしくは脱衣所側にスペースが必要になってしまいます。

浴室内で転倒したり、倒れてしまったりといったトラブル時、浴室側に開かなければいけない扉では倒れた身体に引っかかって、うまく扉を開けることができなくない可能性があります。

その結果救助が遅れてしまったというような状況は避けるべきですから、いつでもスムーズに開閉できる引き戸を利用しましょう。

 

また、開き戸の場合ゆっくりと出入りしているあいだ、扉が閉まらないように押さえていなければいけません。

仮にストッパーを使っていたとしても、突然扉が閉まったときには、指や身体を挟んでしまうリスクがあります。

引き戸であればそうしたリスクや手間がかからず、いつでも安全に使うことができます。

 

・断熱性と保温性を上げる

浴室をいつでも暖かい状態に保つためには、断熱性と保温性にこだわることも大切です。

 

と言うのも、浴室は温度や体温が大きく変わることで、血圧も急激に変動してしまう現象「ヒートショック」が発生しやすい場所。

ヒートショックを防ぐためには、脱衣所や浴室を暖かい状態に保ち、温度差をなくすことが有効です。

 

冬場には、室内であっても気温が10℃以下になることはめずらしくありません。

そうした環境で衣服を脱げば、当然身体も冷えて血管が収縮してしまいます。

そのまま入浴することによって、体温が急激に上昇して血管も拡張し、身体に異変が起きてしまう可能性があります。

重症の場合には、心筋梗塞や脳梗塞といった症状にもつながりかねません。

例えば暖房付きの浴室乾燥機を設置することによっても、快適な室内空間を保ちヒートショックを回避することにつながります。

 

・手すりをつける

浴室内にも、しっかり手すりを設置しましょう。

例えば、座った状態で髪や身体を洗っていても、立ち上がるタイミングはどうしてもふらつきやすいため、そうしたときに掴みやすい位置に手すりがあることで安全性を高めることにつながります。

 

手すりが必要な場所の具体的な目安として、出入り口付近の壁、シャワーや石鹸・シャンプー類に手を伸ばすときに触る場所、浴槽から出るときに触る場所が挙げられます。

手すりのタイプには大きく分けて縦と横がありますので、浴室のサイズや使いやすさを考慮しながら最適なデザインを選びましょう。

 

特に、シャワー横に手すりをつける場合にはシャワーホースに沿わせるように縦の手すりを設置することをおすすめします。

立ったり座ったりといった動作を補助する際には、階段の手すりのように持ち手の高さが少しずつ変わるななめの手すりを取り入れてもいいでしょう。

 

・高齢者でも入りやすい浴槽の高さにする

古い浴槽は、底が深い傾向にあることからどうしても浴槽への出入りが大変になり、その分転倒のリスクも高まってしまいます。

一般的な浴槽はだいたい深さが60cm前後と言われていますが、足腰が弱い人にはストレスになりやすい深さです。

おおむね30cm~40cm程度を目安として、足があがりにくい状態でも安全な高さを実現しましょう。

 

「深さのない浴槽では、しっかり身体が温まらないのでは?」と思ってしまうかもしれませんが、浴槽に傾斜をつければ肩まで浸かることができます。

また、古いタイプの浴槽でも、1/3ほどを埋め込む「半埋め込み式」と言う方法で設置すれば、出入りが簡単になります。

浴槽そのものを交換する工事にはおよそ10万~40万円ほどの費用がかかりますが、安全と隣り合わせているからこそ、できるだけ早く対処すべきでしょう。

 

・浴槽内にも手すりをつける

浴槽へ入る際の「またぐ動作」は身体が動きにくい方にとって大きな負担となります。

また、浴槽内での立ち上がる、座るといった動作もなかなか楽ではありません。

浴槽内では、少し足を滑らせるだけでも溺れてしまう危険性とも隣り合わせているため、事故を防ぐためには浴室の壁だけでなく浴槽内にも手すりを設置しましょう。

立ち座りに使いやすい手すりを選べば、お湯に浸かったあと立ち上がる際にも力を入れやすくなります。

特に、L型になっている手すりは立ち姿勢、座り姿勢どちらもサポートしてくれるのでおすすめです。

 

また、浴槽の縁に直接取りつけるタイプの手すりもあり、手すりの導入が難しいときにも利用できます。

浴槽内に手すりを追加する場合の費用は、およそ5000円からと比較的低価格なため今すぐ大規模なリフォームをすることが難しい場合にも取り入れやすいのでしょう。

 

・腰掛け付きの浴槽を検討

浴槽タイプにもさまざまありますが、おすすめは「腰掛け付き」です。

その名の通り浴槽の中に腰を下ろす部分がついているため、のぼせやすい人でも安心して長湯できます。

腰かける部分は段差の代わりにもなることから、スムーズに入浴するためにも役立つでしょう。

浴槽をまたぐときにも、適宜休憩しながら自分のペースで入浴できるため、身体が動きにくい人も安全な入浴につながります。

 

また、縁が広めの浴槽も腰掛けるスペースを確保できます。

深すぎない浴槽などに取り替えるタイミングでは、縁の広さにも注目しましょう。

さらに、腰掛けることができる浴槽用のふたも展開されているため、より安全性を高めたいときに併用するのもいいでしょう。

利用時には正しい使い方をよく確認し、ふたが壊れたり転倒したりしないよう取り扱いには十分注意してください。

 

・浴室発振器の設置

どれほど設備を整えていても「絶対に大丈夫」「絶対に事故やトラブルが起きない」と言い切ることはできません。

万が一に備えるためには、浴室内に非常ブザーや浴室発振器を設置しましょう。

浴室発振器とは、ボタンを押すことでリビングや自室など別の場所にいる家族に、浴室内で助けが必要であることを知らせる装置です。

ほとんどの商品がワイヤレスで、受信機とセット販売されています。

ボタンタイプに限らず、ひもを引くタイプのものもあり種類豊富に展開されているため、設置しやすく使いやすいものを検討してみましょう。

「できるだけ場所をとらないコンパクトなもの」、「ボタンが大きく押しやすいもの」、「目の悪い人でもすぐに分かり使えるもの」など、特徴や重視するポイント、使い勝手はそれぞれ違うと思いますので、納得のいくものを探してみてください。

トイレのバリアフリーのポイント

トイレのバリアフリーで気をつけたいポイントは以下のとおりです。

 

・洋式トイレにする

・便器の前方か側方に解除スペースとして500mm以上確保する

・「車椅子」が入れるスペースが確保されているか

・トイレットペーパーの設置位置は適切か

・手洗いしやすいか

・緊急コールは適切な位置に設置できているか

・手すりが設置されているか(立ち座りを補助するL型がおすすめ)

・出入り口は引き戸に、緊急時には外から開けられるように

・「保温機能付き」の便座を選択しているか

 

他にも、トイレ入口の段差をなくす、安全な暖房器具の設置などもチェックしたいポイントです。

 

まとめ

高齢者が年々増加しているなか、高齢者が安心して暮らせる住まいづくりが求められています。安全で快適な住環境を整えるためにも、浴室やトイレはもちろん、いずれの部屋にもバリアフリー化は必要になります。若い世代の方も「まだ早い」とは思わずに、将来を見据えてバリアフリーを意識することで、長く安心して暮らせる住まいづくりができるのではないでしょうか。